情報リテラシーやコミュニケーション論などについて研究している
「情報通信学会」の学会誌のなかに、若手研究者の山口真一氏が
投稿した
「実証分析による炎上の実態と炎上加担者属性の検証」という論文
があったので、読んでみた。
日ごろ、ネットに散らばる心無い炎上書き込みの文章を見ていると、
この人たちは、まともな職にもつけず、ニート状態で、収入も低く、
結婚はおろか恋愛もできず、頼みの綱はポルノイラストや動画で、
そのため人の痛みがあまりわからなくて、長らく引き篭もって、
異常に長い時間をインターネットにどっぷり浸かって過ごしているので、
実感の伴わない文字情報ばかりを頭に詰め込んでいるような、
学力のない、バカでどうしようもない、社会と疎外されたような、
コミュニケーションのできない人間たちなのかなあと思っていたのに、
実際、炎上に加担している人達の人物像を調査してみると、
◎独身者よりも子供と同居している既婚者のほうが多く、
◎個人年収が増えるごとに炎上に加担する確率が増え、
◎世帯年収が増えるごとに炎上に加担する傾向が頑健に示され、
◎学歴や学力水準は、炎上には関係なく、
◎インターネットの利用時間の長さは炎上の加担には関係ない
というのだ。
ええーっ! なんとなく想像していた人物像とぜんぜん違う・・・。
と、思いつつ、しかし、よくよく考えてみれば、
フェイスブックには、実名も顔写真も公表しながら、
公然と、有名人の不謹慎を糾弾する書き込みをしたり、
新聞各社の被災地に関する投稿に、いちいちイチャモンを
書き込んだりしている人はたくさんいて、そういった人達の
日々の生活ぶりや、学歴、職場などを見ると(公表しているので)、
決して《社会の最下層》ではないわけです。
じゃあ、なにが顕著な「炎上加担の条件」になるのかというと、
「SNS(ツイッター、フェイスブック等)の利用時間の割合」
に比例するのだそうで。
一日中ずっと家にいて、インターネットを見ているニートよりも、
一日のべ1時間程度、フェイスブックやツイッターだけを利用する
会社員の子持ち既婚者のほうが、炎上に参加しやすい、ということだ。
このグラフを見ると、なるほど、と思う。
《炎上》の年間件数をグラフにしたものなんだけど、
2011年から急増している。
これは、ツイッターとフェイスブックが流行りはじめた時期と重なる。
なるほどなあ・・・。
さらに、興味深い検証結果もあった。
実際に炎上騒ぎの起きたブログを調べてみたところ、
700件の「罵詈雑言の書き込み」について、アクセスログを検証したところ、
実際には、たった4人のIPアドレスしか記録されていなかった、と。
そして、2万人の調査対象からとった結果でも「炎上に加担したことがある」
と答えた人は、全体のたった1.1%であったとされている。
要は、単なる少数のクレーマーが、ギャーギャー大騒ぎをしてみせて、
圧力を与えているだけなのか。
だったら、カップヌードルのCMのように、企業が炎上に屈するのは良くない
ことだよなあ。